Jul
17th
Sun
17th
私の中で向伊への気持ちはこの一年のあいだ、
とても一人の人間に対する感情とは思えなかった。
朝起きると、私の一日は向伊を許せる日と、許せない日に分かれた。
時間は向伊を覚えている時間と、忘れている時間の二つだった。
あのときああ反応していればよかったと嘆く私と、そうでなくてよかった私の二人だった。
巡り巡って向伊がいい人のように思えるときもあった。そんなはずがなかった。
出会ってしまった、という言葉が頭の中を回り続けた。
私は常にその言葉に振り回されないように自分が遠心力の中心だとイメージした。
うまくいかないときは身も心も持っていかれてぼろぼろになった。
— via「ぬるい毒」本谷有希子