Sep
2nd
Fri
2nd
十二月の空気は均質にぴんとはりつめ、地上では風なんてまったく吹いていないのに、
みあげるとはるか上空では猛スピードで雲が流されているのがみえた。
わたしはしばらく立ち止まって、夜空を見上げていた。
何層にもかさなりあった
白とも灰色ともつかなくなった夜空の
雲の濃淡は生き物の影のようで、
おおきなものが音もなく動いているのをみつめていると、
胸がどきどきと音をたてた。
真っ白に輝く月が顔をだした。
静かな、誕生日の夜だった。
わたしはジャンパーのポケットに両手を入れて歩きはじめ、
人影のないひっそりとした住宅街の道をゆくだけで、なぜなのか、
自分が少しだけいいものになったようなそんな気がした。
— via「すべて真夜中の恋人たち」川上未映子