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Sep
2nd
Fri
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三束さん、わたしは三束さんを、愛しています。
三束さんのことを、愛しています。

部屋のなかで、会えないとき、夢から覚めたときに、どうしようもなく胸からこぼれ、
ただすぐに消えてゆくしかなかった言葉よりももっとつよいかたまりを、
わたしは三束さんにむけて放っていた。

三束さんを愛しています。

そう言ってしまうと下瞼と目のすきまが膨らむようにみるみるうちに涙があふれ、
頬を流れて顎にたまり、それからたくさんの粒になって夜のなかへ落ちていった。
瞬きもせず、何かから逃れるように、わたしから逃れるように、
涙は夜を目指す生きもののようにわたしの頬を這い、あとからあとから流れていった。

わたしは顔をぐしゃぐしゃにして泣きながら、
最後に泣いたのはもう思いだすこともできないほど遠い記憶のなかのことで、
あのときも、あのときも、わたしはきっとこんなふうに泣いてしまいたかったのだと思うと
それがまた涙になってわたしはもうそれを止めることができなかった。
でもわたしは、いま、記憶のどこでもないここに立っていて、
三束さんのまえに立っていて、三束さんの目に映り、わたしはそこで泣いているのだった。
三束さんは何も言わずに、わたしに手をにぎられたまま、
わたしの目のまえに立っていてくれた。

誰かにただ見守られながら泣くということが、
こんな気持ちのするものだということを、
このときにわたしははじめて知ったのだった。


— via「すべて真夜中の恋人たち」川上未映子